平成20年1月17日の連歌作品

賦 初何連歌

(初折 表)
綾錦紅葉帯なす水面かな 玖那

山萩さやぐ今宵待つ月 康代
露時雨群雲払う風ありて 正謹
耳に留める初雁の声 康代
友はいまいかなる旅路重ぬらむ
うたたわらべに返るふるさと 正謹
藍暖簾かかりし梁は重々し 善帆
白き鼠は人知れずあり 玖那
(初折 裏)
しめやかに草木もこもる雪の中 康代
小春の陽ざし沁み透るがに みのり
赤鼻の姫も忘れずかの君は
およすけてなほ虫愛づる日々 正謹
音(ね)をそろへ露けき野辺のカルテット ゆきこ
澄みて流るゝ峡のせせらぎ 康代
登り来て紅葉の奥の無住寺 みのり
月こそ友としのぶ盛衰
わが世とておごれる時の短さに 玖那
相生ひ祈り契る高砂 康代
耳元で甘く囁くわるいひと 正純
雪消の野辺に蝶も連れ舞ひ
初花は若木の春を寿ぎて たかし
角ぐむ葦にそよぐ川風 康代
(二の折 表)
よしあしは船頭まかせふねの旅
酒くらはんか蕎麦くらはんか ゆきこ
手を打ちておとがいはずすひとときに 玖那
繁昌亭に笑ひ過ぎしが みのり
秋の日はつるべおとしのもどり道 康代
街の灯火長夜告げたる 正謹
霧流れ哀しき曲を辻楽士
松虫の声ヴィオロンに似て 玖那
ため息と胸の高鳴り片思ひ 康代
供奉のかの君見しその日より
有り明けのしぐるる別れ誰や知る 善帆
栄えて枯れて老いて召されて みのり
とこしへのふるさとなれや神の国 ゆきこ
真砂清らに浜洗ふ波 正謹
(二の折 裏)
たが衣つれなしづくる松の枝 たかし
天の香具山夏来(きた)るらし みのり
百官に薫風わたる大極殿
功翻れば番に引かるる ゆきこ
欲得のニュースの間(あはひ)ちりとてちん 欣子
賞味期限のなきぞ楽しき たかし
濁る世を流れ清める五十鈴川 玖那
宮の千木見ゆあやにかしこし
村々に小さき杜在りあきつしま 正謹
隈なく満ちてそれぞれの月 みのり
幾秋を旅にさすらう現し身に 欣子
今ひとたびは無き峰もみぢ 正謹
数多度御幸迎えし花の径
車返しの慈恩寺桜 たかし
(三の折 表)
牛を追ふ声ものどかに流るらむ はま菅
屋形の船でゆく水の郷 正謹
見染めしはその折隣る笠の人
色にでにけり問はぬくれぐれ 欣子
車もて宴に出るは咎めなり 正謹
おちこちに見ゆ衛士のかがり火 玖那
手松明五六騎急ぐ脇街道
三日天下となるかならぬか たかし
年ふれど姿変わらぬ本能寺 康代
初雪となる上京の空
あさぼらけぬくもり胸に抱きつつ 正謹
うるむ有明わかれともなし みのり
まよひしも踏みし秋野に我が恋の 義信
行方さだめぬ風ぞ身にしむ 志津子
(三の折 裏)
下蔭に掬ぶま清水こんこんと 欣子
はや夕蛍里の土橋
相宿のお国訛りを懐かしむ 康代
油売りとて休む日もあり 正純
暖冬と思ひきや雪道を埋め みのり
都の跡に木枯らしぞ吹く 玖那
舎人らも牛飼童も行きなやむ
切り立つ崖にかも鹿の影 康代
恋はその危ふさゆゑに魅かれゆく みのり
朧月夜の契りわりなし
歌ひつつ春やをかしと舞扇 欣子
鳴けやうぐひす遊び心に ゆきこ
花さかりてふも楽しむかくれ鬼 康代
偽(いつはり)なんぞ知らぬ可憐さ みのり
(名残折 表)
きのふけふあきなひの道おもへらく 玖那
始末をいかに船場数へ日
さ夜更けてただしんしんと雪の降る 善帆
山小屋の戸も固く閉ざされ 康代
旅に出てをち帰らぬはいかなこと たかし
かぎりある身をまま知らぬふり 正謹
此の中(ぢゅう)もあなたこなたに浮名たて
別れも待つも秋深めつつ 欣子
さ牡鹿の声より袖におくか露 自然坊
身にしむばかり萩の上風 正謹
曇りなき月に慰むわび住ひ 康代
まれなる客に砧打ち止む たかし
遠寺の鐘のひびきもなつかしく
絵巻にしのぶ夢の数々 玖那
(名残折 裏)
はれやかな青葉の下の駒競べ みのり
後方(しりへ)に高き雲の峯たつ ゆきこ
さざ波の寄る白浜に空舟(うつおぶね) 康代
沖に漁り火浮きぬ沈みぬ たかし
我やまた世過ぎたのしく土を捏ね みのり
眠り誘ふ春の雨音 康代
花散るや銀の滴ときそひつつ
日ごと豊かに長閑なる野辺 善帆