平成20年4月19日の連歌作品

賦 何世連歌

(初折 表)
ゆづりはや嬉しかるべき嫁が君 康代

いや頻け壽事(よごと)祈る初空
海原に春の潮音はとどろきて みのり
北の氷は流れ寄るなり 順子
飛ぶ鳥は風の族かはろばろと 欣子
茜に映ゆる野良の夕され ゆきこ
拵へは家それぞれの月見膳 正謹
紅葉の冠者酔てそうらへ 玖那
(初折 裏)
立田姫裳裾ゆたかにわたりゆく
仄と見えしも薄霧の中 みのり
心をば通はすはじめ垣の内 たかし
切るに切れぬを縁(えにし)とぞ言ふ 正純
あだし世に塵絶つ身とはなりぬれど 大枝
夏草ばかり生(お)ひ競(きほ)ふ庵 ゆきこ
更けゆけば蛍の飛ぶもをかしけれ
それ甘辛の二つ道あり 玖那
飲むほどに酒は憂ひの玉箒 善帆
ひとさし舞を打てや小鼓
書割の月も朧にさしそへば 欣子
ゆくらゆくらと霞たつ野辺 みのり
むかし師と眺めし花の変はりなく たかし
色をも香をも残す言の葉 ゆきこ
(二の折 表)
忘れめや一夜の夢の仮枕
もろこしびとのことぞおもへる 玖那
尾根はしる万里の道に果てありや 康代
西へ西へと行かば浄土か みのり
ねもころに旅立つ朝を法師蝉 欣子
見送る里人秋の風過ぐ
故郷もいつしか過疎のそぞろ寒 ゆきこ
草木うるほす久々の雨 康代
竜神に祈らば雲の湧き立ちて たかし
冷たき海に舟影の消ゆ 正純
叫び呼ぶ声を伝へよ冬鴎
凍てし涙の跡なる月や 順子
徒(いたづら)にかけし情けも恨みにて みのり
醒めれば痛み残るこめかみ 正謹
(二の折 裏)
越え難き天下の険よ親不知(おやしらず) ゆきこ
遍路の鈴も野辺に流れて 玖那
鉄鉢の小さきに充たす忘れ雪 欣子
弥生といふも寒きこの頃 みのり
端(はし)ならず基(もと)こそ築け国の守
夢やあらなむこの世なる間は 正謹
今様は焦がるも冷むも浅かりし 順子
浮かるる魂を定め兼ねたる 英夫
月の夜は草むらごとに虫鳴きて みのり
祭相撲に宮の賑わひ たかし
ほどもなく色なき風の通ふらん 善帆
稲刈る里も澄みわたりけり 玖那
凛として気高き花の返り咲き ゆきこ
冬空晴れて故なくさびし
(三の折 表)
あてもなく日々を重ねる政ごと たかし
錨を下ろし時つ風待つ 康代
早鞆の瀬戸の浦廻の潮速み 信也
哀しき皇子の上語らなん 正謹
宝算八歳御掌(みて)合はせ給ふ春夕陽
霞たつ野に低き琵琶の音 順子
さへづりに色あらたまるときは草 英夫
待つも久しく山は開かる みのり
雹一過たちまちにして朝の月 ゆきこ
移ろひ渡る情けあらまし 康代
かの人のつれなさゆえに忘れかね 正純
七ついろはにすさぶこの頃 欣子
たまづさにつくさぬなげきおもいみよ
ひねもす止まぬくさめ涙目 正謹
(三の折 裏)
箱抱ふ翁の噂をちこちに 順子
笑みため蒔こうよ福の種をば 正謹
かかる世も神の御田は水ぬるみ みのり
蔵に宿借る燕飛びかふ 康代
絵団扇やいとしき和子に風遣れば ゆきこ
かしらならべてしばしうたたね 玖那
鞠も踏め連歌も詠めと夢かさね
道遠くして奥ふかき山 たかし
月出でて廃れし寺も照らさるる 順子
砌たしかに虫の声々 欣子
澄む水にサミット待つや北の湖(うみ) みのり
和(なぐ)しくあらな人も地球も ゆきこ
戸鎖しなき里をことほぎ花万朶
日待ちのむしろ菜飯草餅 正謹
(名残折 表)
ともどもに陽炎の道よろぼいて 玖那
恋ふるは多くひとの面影 たかし
過ぎぬれば焦がれしことぞ忘れなむ 順子
惰性で嵌めてるマリッジリング みのり
油売り抜くに抜かれぬ刀さげ 正純
浮世を忍ぶ裏店住まひ
にぎり飯食べて赤穂を思ひやる たかし
おぼつかなくも四十七文字 玖那
手習子絵日傘さして草紙提げ
虹のかなたに鳥も消へゆく 順子
遥かなる雲を見下ろす高き嶺 康代
何おもしろきにごるうつし世 玖那
おもむきは真澄の水に浮かぶ月 みのり
蘆刈舟へ銀波連なる
(名残折 裏)
もみじするしづの丸屋に住むは誰そ たかし
それかと聞けば虫のいろいろ ゆきこ
風わたる道の辺の原ささめきて 順子
日は高くして追ふ影もなし 正謹
しばしとて草鞋の紐をゆるめなば みのり
温む水際の匂ひゆたかに 善帆
ふるさとの花に会ひたる通り抜け たかし
人こもごもに幸せの春 ゆきこ