平成13年2月9日の連歌作品

(初折 表)
言つがふ歌に冬なしやよ杭全 伏木 

春待ち敢へず土割るつくし 正謹
山元の野辺に水ゆく音のして みのり 
結ぶわらじの緒もあたらしき 欣子 
鳥声に憩ふも久しいざ発たむ 淑子 
日毎の業も春のをとづれ にちまろ 
藍染めの藍の匂へるおぼろ月 美代子 
やはらかに吹く風あたたかく 淳 
(初折 裏)
帰るさを忘れてしまふ磯遊び 美代子 
たれかれとなく童(わらしべ)ならん 石猿 
星降る夜語り部囲む影ありて 正謹 
むせぶ琵琶の音さわぐ篁 欣子 
眼を閉ぢて別れし人と遊ぶ野に にちまろ 
うつせみあはれもてあましをり 美代子 
涼しくも月に寄りそふものあまた 伏木
紫煙のうちにJAZZの漂ふ にちまろ
思ひ出のワルツよ枯葉よ嘘は罪 みのり 
翁は語る銀幕の夢 正謹 
岩に花咲くことあらん祈りつつ 美代子 
異国の空の南洋の春 にちまろ 
言の葉のおぼろなるまま旅の宿 美代子 
告げぬ弱さの己れにぞわぶ にちまろ
(二の折 表)
思ひみな風に託せし信なきに 正謹 
仰げば遠き横雲の空 にちまろ
頂の御廟はただに北対きて 欣子 
弓取る人も無き数のうち みのり 
聖あり縁を結ぶ法の歌 にちまろ 
千世にやちよにこの世のかぎり 美代子 
をもかげは雪の彼方にふりつもる にちまろ 
ペチカ燃えろよまどろむもよし 正謹 
ゆり椅子にうずくまる猫たゆげにて 綾乃 
見るべきは見つするべきはしつ 石猿 
しふねきを捨て月寂ぶる杜に入る 正謹 
道くれなゐに映ゆるもみぢは 美代子 
谷ふかきここが故郷藁の塚 欣子 
寝覚めのころは川音となる にちまろ 
(二の折 裏)
すれ違ふ心やきぞの別れ際 みのり 
いつはりにてもいだかれたきを 美代子 
怨みわびやがて蛇となる道成寺 伏木 
とよむ大鐘民鎮まりぬ 正謹 
かしこくもみこと宜らせるすめろきに 美代子 
朝日影さす松の雄々しさ みのり 
一村は柿もみぢして残る月 欣子 
瀬音と唄ふ夜のぬくめ酒 淑子 
秋の空かわらぬひとと菊づくし にちまろ 
女心を問はず語りに 正謹 
ほんたうに欲しくはないの山笑ふ 美代子 
迷ひ吹き去る春の初風 にちまろ 
待ち待ちし定めの花ぞな散らせそ みのり 
こぬれを移るやよ匂ひ鳥 美代子 
(三の折 表)
あかぬかな寝覚めのこゑに聞き分けて にちまろ 
筑波の道のいよよ遥けし 欣子 
真白なる深雪すべなしさはいへど 美代子 
法師湯をなす験あらたか 正謹 
晩鐘があかねの空を見送る日 にちまろ 
露台にやをらなかでを下ろす 美代子 
打つとなき音に波紋のひろがりて 欣子 
みぎはまされば袖ぞ濡れつつ みのり 
あすよりは始まる朝のつとめとて にちまろ 
うまやいつしか霧襖たつ 美代子 
吐く息はうちそろひたり雁きたる にちまろ
伏して敵を待てばうそ寒 石猿 
後の月さびしく照らす落し文 美代子 
うるむこころの涙なりけり にちまろ 
(三の折 裏)
無きになす忘られなくになかなかに 美代子 
うぶすなの山うぶすなの川 正謹 
石仏(いしぼとけ)をちこち並ぶくにのさき 美代子 
苔むすまでも祈りつきせず にちまろ 
ゆく年と来る年刻む星冴えて みのり 
囲炉裏に集ふ若き唄声 欣子 
頂に挑むこころは結ばれむ にちまろ 
高嶺の草も色揃へたる 正謹 
ひとすぢの隠れ道消えなんとせう 美代子 
ふたたび渡る海の霞みし 伏木 
ゆらゆらと君は天女か月やよひ みのり 
雛のぼんぼり手向く白酒 欣子
うるはしくかほばせうかぶ花あかり 美代子 
ピアスにゆれる夜のうたかた にちまろ 
(名残折 表)
あづまよりたまひしメールは愛あふれ 美代子 
「チチハブジ」なり子等とよろこぶ にちまろ 
雪蓑に雪をかづきて帰りきぬ 美代子 
地蔵に笠を残す優しさ 英夫 
日の本の善きすがたぶり語るべし 正謹 
異国の人のこころ満たさん にちまろ 
山川に四季巡るこそあはれにて 正謹 
杜氏の育てし地酒の旨さ 正純 
鉤になり棹となりつつ渡る雁 美代子 
月澄む野辺の露の下草 欣子 
旅枕かた敷く袖もぬるるらん みのり 
あふみは未だ逢坂の関 美代子 
琵琶の音か撥おと気高くわたりきて 欣子 
いくさに果てし魂鎮めかし 伏木 
(名残折 裏)
新しき橋のおばしま風薫る 美代子 
若葉はみどり濃くも淡くも みのり 
あららぎの檜原の峯に見えかくれ 欣子 
冥加に余る聖ありてふ 正謹 
捨てはてて何をか取らむ歌の道 にちまろ 
こなたかなたに霞たなびく 美代子 
花こそは新しき世の紀(しる)しなる みのり 
南によする風のいさをし にちまろ