平成13年9月12日の連歌作品

(初折 表)
梅が枝にあらたま渡る美苑(みその)哉 にちまろ

東風吹き匂ふ天地(あめつち) 美代子 
明かりゆく水面の光のどかにて 正謹 
重き心に浮かぶほほえみ 正純 
四方振ればいづくにか染み渡るらん 由希子 
遊行聖の祭杖の鈴 にちまろ 
月さやか虫の音とこそ聞きまがふ みのり 
裾野はただに深まるもみぢ 欣子 
(初折 裏)
山仕事一日終へたる露の里 正謹 
夕映えのなか筏つらねて にちまろ 
流れゆく長持唄の声よろし みのり 
蓮堀りの腰伸ばし見送る 正謹 
頬そめし面影抱いて雪の朝  正純 
思ひ起こせば初めてのふみ にちまろ 
逢ひ合へることもかなはず堪ふる恋 美代子 
鈴鹿の関のしげき行き交ひ 欣子 
ライダーの夢は砂漠のモトクロス みのり 
つつがなかりつエープリル・フール 美代子 
遅き日の名残待ちとる帰るさに にちまろ 
月も朧の中に身を置く 正謹 
と見かう見花から花へ目は遊び 美代子 
やさぐれなれどいつか錦を 石猿 
(二の折 表)
登り来てなほ忘れえぬ誓いごと にちまろ 
いは灼くるとも狂ふべからず 美代子 
雲の峰見上げ打ち出す太郎冠者 正純 
蝸牛のろのろ雨も来るらし みのり 
あるがまま生きてもみんか草の宿 欣子 
あはれにうとき人のまにまに にちまろ 
音に聞く藤江の浦の波やさし 美代子 
うすむらさきに春陽くれつつ みのり 
下萌えの草葉に翳はうつろひて にちまろ 
恋する猫の足取り速し  正純 
たくみなる手業(てわざ)に酔ひて過ぐるとき 美代子 
夜にうちけむるサックスの音 にちまろ 
これやこのノスタルジアの望の月 美代子 
手帖の君は霧の彼方へ 正純 
(二の折 裏)
言の葉は熱く残れど秋寒し みのり 
八声の鳥もしどろに鳴くを 欣子 
うたたねを惜しむこころに残る朝 にちまろ 
物寂びしらに朦朧として 正謹 
重ねゆく齢(よはひ)云ふまじ針供養 美代子 
贈るあてなきセーターを編む 正純 
子猫等の糸玉あそび手のすさび にちまろ 
新たならぬも有難き日々 正謹 
ありのまま生きて今宵の月まどか みのり 
風にしたがふ薄のほなみ 欣子 
粧へる山の裾野のうるはしく 美代子 
川面に色を添へて暮れ合ひ 正謹 
波の果て花に背いて大和散る 正純 
なに隠すらん棚引く霞 美代子 
(三の折 表)
春といふをパソコンの像凍りつき みのり 
いとけなき児をあやめし刃 欣子 
願はくば身を晒さんと仰ぐ空 正謹 
梅雨は晴れ間の茅の輪をくぐる みのり 
左右また左へと舞ふ浴衣 柳絲
若かりし日を偲ぶ絵姿 忍冬 
牧にあれどサラブの威風失はず みのり 
夢を駆け抜け大輪の菊 正純 
きぬぎぬの名残を惜しむ露に濡れ 美代子 
線香花火昨夜(よべ)のたはむれ みのり 
月に吼え天に挑むも若気ゆゑ 正謹 
獅子の髪振り明日を変える 正純 
よろこびは末広がりに来るならん 美代子 
ひねもす穏に波の寄る浦 みのり 
(三の折 裏)
忘れ得ぬ国の便りを風に聞く 正謹 
枯野の宿に嘆きつるかも 美代子 
色ふかき高尾の紅葉かつ散れば みのり 
深山しづけき絵巻の聖 欣子 
浮舟の想い今なおとどめつつ 正純 
覚めてにれかむおぼろなる夢 美代子 
恋猫のけふもけふとてしののめを 欣子 
万愚節とは知らで読む文 みのり 
まことの身ふしたるobakeは花の下 美代子 
零れおつるは桃色吐息 善帆 
片割れの月に託さん歌ごころ 欣子 
推して敲きてさやかな付けに 美代子 
旧き友訪ね酌み交う濁り酒 正純 
然(さ)れど定年然(さ)れば花道 みのり 
(名残折 表)
耐えがたき仮の宿りもありがたし にちまろ 
襖触(ふ)れつつががんぼの飛ぶ 美代子 
はかな身のあはれ恋ゆゑ盲ひなる みのり 
謗り戒めなんの手に手を 欣子 
成敗のあるべきやうを世に問はむ 正謹 
イヌ・サル・キジを伴ふもよし みのり 
萌えいづる蕨めでつつゆく峠 美代子 
雪げの道にこころ澄みゆく にちまろ
新しき制服の背に風光る 正純 
三.三.五.五.声はづませて 欣子 
涛々と「青きドナウ」の四部合唱 みのり 
泉に茂る菩提樹の下 あやの 
さざなみの寄れば月影涼しくて 正謹 
待ちかね飲むはうまし酒なり 美代子 
(名残折 裏)
手造りの陶の盃ふかき藍 欣子 
空の彼方の憧れの色 みのり 
初雁の来たみちすぢに目を遣れば にちまろ 
煙管のおきなバスを待ち居る  玖那
ふうらいをなべてうべなふ風の音 正謹 
静かな庵にたぎる釣り釜 久美 
咲き初めし花のかずかず香しく 隆志
霞の奥も広野いやさか 正謹