平成13年12月2日の連歌作品

(初折 表)
枯れし野に折りたく柴のぬくみ哉 にちまろ 

袖しぐるとも旅は道づれ みのり 
ゆるらかに渡しの舟は岸着きて 美代子 
おほけなき身をたのむ大地(おほとこ) 正謹 
あすなろの明日は檜のこころざし みのり 
空の深きをさして雁 欣子 
白妙の雲を領巾とし月今宵 あすか 
待たるるものは山の粧ひ 正謹 
(初折 裏)
尾根道にひねもす拾ふ塵芥 にちまろ 
万事(よろづごと)置き励むたのしさ 美代子 
網なりに連ね歌をぞ参らせて あすか 
淡き思ひもまぎらせてみむ 善帆 
しのぶれば「苦き」と「若き」似たる味 正謹 
うるか食(は)みつつ呑む冷し酒 美代子 
こは為(し)たりはっしと扇に手を打ちて みのり 
遅れとらじと駒の口縄 欣子 
時の鐘しづけき村に響きたる 正謹
狭霧ににじむ昼のともしび あすか 
山の端に有明の月かくれ行く 玖那
ともづな解きし「くらま」冷(すさ)まじ 美代子 
恙無き船旅なれや国の花 欣子 
玉の緒柳とこしへになむ あすか 
(二の折 表)
ゆるやかに舞台回れば雛の段 みのり 
まねきの文字に胸の高鳴る 玖那 
浪速にて会ひたるひとのふみやさし 美代子 
おしてる海の先に宿れる 隆志 
幸せは山の彼方の空遠く 英雄 
身過ぎ是非なく出る国境 正謹 
昔より聖の戦聞き知らず みのり 
閻魔堂なる閻魔の怒(いか)り 美代子 
夕映えの豊旗雲に秋思ふと あすか
頃は夜長ととく失せにけり にちまろ 
まろまろと見えたる月はいづかたへ 美代子 
あと白浪の真帆ぞ知るらむ 玖那 
鳥の名を声にたてつつ流れ木の 欣子 
みをつくしても甲斐なき別れ あすか 
(二の折 裏)
心無く逢ひ初めし夜ぞ形見なる にちまろ
想ひに燃ゆる蛍ともしき 正謹 
ジーンズのいっち似合うてラムネ飲む あすか
隣の家は卯建(うだつ)をあぐる 美代子
をそどりのはたと睨まふ屋根の上 章 
雲にとふべし明日の定めを 玖那 
満ち欠くる廻りはあはれ月のみか みのり 
時とどまらず青北風(あをぎた)の吹く 美代子 
もみじする麓は澄みてさざれ水 欣子 
瀬音幽かに菊酒温む 善帆 
独りゐにラジオの声も懐かしく 正謹 
いつか来た道鐘の鳴る丘 みのり 
送れる葉書ものがたる旅(同時に付いたため12句ふたつ) にちまろ 
寒明けを待ちて婚荷の花むすび あすか 
名残の雪の清らに匂ふ 美代子 
(三の折 表)
安曇野はひと雨ごとの山の春 正謹 
里に入り来る駄馬足ゆるし にちまろ 
うまうまとうまくはゆかずうまをうつ 美代子 
助(すけ)をたまへとおらぶ弱法師(よろぼし) 正謹 
夢うつつ無明の眠りさめやらず みのり 
窓辺をよぎる夏蝶の影 章 
虹の果て空の果てへと飛びさりて 正純 
マゼラン海峡ゆく熱気球 欣子 
波静か鴎の歌のまじりたる 玖那 
詠唱きまり喝采の湧く 章 
月の下一群となるひとだかり にちまろ 
あはれ身に入む覗絡繰(ノゾキカラクリ) 正謹 
かわりゆくもみぢ葉の色かなたあり 玖那
呼びて戻らぬ秋と知るべく みのり 
(三の折 裏)
をりをりに我をうべなふ山の径 正謹 
粗朶積みて棲む宇治も奥なる あすか 
杣石に杖一本の置かれゐて 章 
親を呼ぶらし子鹿の声に 欣子 
若武者の手柄をいそぐ初狩場 にちまろ 
きのふの雪を染むるくれなゐ みのり 
金色の西日よろしき寒牡丹 正謹 
当麻の里に織るは曼陀羅 欣子 
もろもろのほとけ念じて遍路行く 玖那 
山門の前鞠をつく歌 にちまろ 
鳥かへる片へは淡き夕月夜 正謹 
焼き蛤の香る厨辺 章 
外つ国のいろせ思ほゆ花の窓 あすか 
卒業の子等壁画残せる 章 
(名残折 表)
二つ影ながく放課後よりそひて 玖那 
うつむく頬を撫でていく風 正純 
木洩れ陽にゆれる真昼をまどろめる にちまろ 
桑の実摘みし指(および)むらさき あすか 
朝顔に蟷螂が斧かまえたり 玖那 
負けるが勝ちと萎れて見せむ 正謹 
歌こそは傲れる世にも残るらん にちまろ 
須磨の波間に身は消えたとて 正純 
岩陰の悴け狼吠える月 章 
侘しくもあり儚くもあり 正謹 
草摺りのいつしか褪せて馴れ衣 みのり 
そもなれそめは小田刈りし頃 あすか
年をへてまたともに踏む露葎 にちまろ 
末葉の宿の空は澄みたり 正謹
(名残折 裏)
雲間にてまなざしはただ憩ふのみ にちまろ
心静かに枝豆を食む 玖那 
ここちよき一日(ひとひ)のわざの終ふるとき 善帆
げにうぶすなの風の音ゆかし あすか
時至るよき便り来る日はうらら 玖那
こふ鶴渡る九重の春 正謹 
老ひたるも若きもかざせ桜花 にちまろ
ともに筑波嶺草萌えの道 みのり