平成13年12月22日の連歌作品

(初折 表)
大内の花ぞ新宮(にひみや)冬晴るる みのり 

鶴(たづ)舞ひたつる千代の松が枝 欣子 
日のしずく垂氷の末に輝きて 正謹 
足取りかろし駅までの路 玖那 
外つ邦の友の便りを懐に にちまろ 
鹿島立つ浦薫る初潮 あすか 
やうやくに出でたる月の羞(やさ)しかり 美代子 
すすき・かるかや捧げまつらん みのり 
(初折 裏)
磐が根のこごしき径を踏み分けて 欣子 
たたなはる峰四方見張るかす 隆志 
雨ありて草木潤ほふ有難さ ひでお 
早苗の丈も伸びる盛りに にちまろ 
兼言(かねごと)は蛍の闇のあはければ あすか 
よさりにおもふうしろすがたを 玖那 
みこころに触れたくあふぎし菩薩さま 美代子 
光に影に慈しみあり 正謹 
飲むほどは酒こそ日々の頼りにて にちまろ 
大江が鬼は絵双紙の中 あすか 
月かすむ丹波路(たにはぢ)の里のどかなり 忍冬 
野に遊びてはてふてふのごと みのり 
をちかへり咲ける桜の貴(あて)なるよ 美代子 
馴れこし庵に届く玉章 隆志 
(二の折 表)
羽根あらば越えてかゆかん待乳山 欣子 
隅田川原のけふは祭り日 正謹
姉妹とて親の浴衣をあらそひて にちまろ
耐へし継子は灰かぶり姫 あすか 
いつはりとまことは一つ表裏 隆志 
かたちのこさず海に降る雪 美代子 
映像に残る姿もなつかしく 玖那 
我生くるべきはたや死すべき みのり 
不帰(かへらず)の峰を山踏み独りして 正謹 
声に帰るか高志の雁 欣子 
月おぼろすみれに寝(い)ぬる和尚さま あすか 
鄙(ひな)には鄙の弥生の愁ひ 美代子 
治まれる村里愛し敬まふて 隆志
母ともなれる人のけだかさ みのり 
(二の折 裏)
天草のマリア幼子いつくしむ 玖那 
ものさびしらに八十の島々 正謹 
流れ行く雲のはこびや鴎追う にちまろ
かなたは晴れてはや鰤起し あすか 
寒椿豊かな漁を願ふごと 正純 
かじかみながら門(かど)にて待てり 美代子 
来(こ)といふを来(く)れば灯もなし応(いら)へなし みのり 
露に濡れつつ袂を絞る 美代子 
背の月かえりみなせそいたづらに 正謹 
時を惜しむや雁の一声 隆志 
神南備の山と崇むるいく御代ぞ あすか 
めぐる小川も水温む頃 欣子 
おのずから曲水となる花の下 にちまろ 
いとかぐはしき草餅を食む 美代子 
(三の折 表)
ふるさとに泣くいにしへの流行歌(はやりうた) 玖那
あとかたもなくその様変はり 隆志 
かの君の愛でし明石の白き橋 正純 
踏みわたりなば相生の松 あすか 
平均台はかるがごとき縁とや にちまろ 
尺取虫は尺を取りつつ みのり 
目にも見よ五分の魂ここにあり 玖那 
和(なご)しき顔にかたへの地蔵 欣子 
吹く風がはこびきたれる鳴子の音(ね) 美代子 
むらだちさわぐ穂にぞまぎれて にちまろ 
芦を刈る河辺の小船照らす月 隆志 
波ゆらゆらと影冴えわたる 善帆 
年忘れ呑みて語りてわすれねば 美代子 
挙句心の錆捨てやらず 正謹 
(三の折 裏)
朝毎に思ひの玉を手繰り寄せ みのり 
母を背負ひて行くご縁日 隆志 
軒下に並ぶ小店の小商ひ 欣子 
けなげにはげむ風鈴の舌 あすか 
昼下がり暑さに言葉うしなへり にちまろ 
うすぎぬを脱ぐ水のほとりに 美代子 
仙女ともなりたるここち君を待つ みのり 
時刻む音甘くせつなく 正純 
影おとす白雲ひとつ秋の暮 欣子 
いとど鳴かねばいぢめられをり 美代子 
月草の移ろひやすき世の情 みのり 
けふは山吹襲てみしが 正謹
翠黛の嵯峨にさざめく花衣 あすか 
かすむばかりの墨染の袖 にちまろ 
(名残折 表)
ふりむけば陸(くが)とほかりしわたのはら 玖那 
さもあらばあれ戦(いくさ)にい行く 美代子 
ふところに歌物語しのばせて 欣子 
梁(うつはり)の塵動かしてみむ 隆志 
ましら寝る積乱雲はかなたにて 玖那 
西域遥か道極めたし 正謹 
掌合わせ迎える民の国 にちまろ 
黄金(こがね)に靡く穂の美しき 善帆 
秋雨に鯱鉾ぬれて空さみし 玖那 
山また山も出づる月待つ 美代子 
庵近き谷の水音暗き夜は みのり 
子等に囲まれ昔を語る 正謹 
重ね着の老いと温みを分かつ猫 欣子 
訪ね来るとの便り嬉しき 隆志 
(名残折 裏)
風落ちてなごりは波の寄するのみ 正謹 
海女の磯笛空に消えゆく 秋桜 
旅人のふとふり仰ぐほととぎす みのり 
峠の茶屋にかをる焙じ茶 あすか 
見渡せば忘れ雪さへあたたかし にちまろ 
雛のほほへみいとしずかなり 玖那
ぼんぼりにけぶる紅(くれなゐ)千枝の花 欣子 
春の光によろず幸あれ 隆志