平成18年6月14日の連歌作品

(初折 表)
枝枝の芽吹き競ふも宮の杜

梅ぞしるべときなく鶯 欣子
深山より雪解の水は流れきて 隆志
墾る小田代に昼を憩ひぬ 正謹
浮き雲のあすは何処の国ならん 泥舟
旅の衣にゆるる穂すすき 善帆
大野には月を宿さぬ露もなし みのり
窓辺に寄れば雁の声々 裕雄
(初折 裏)
ようようにかそけき寝息初の孫 泥舟
ながき睫を若葉風撫づ
洗ひ髪乾かぬままに橋に待つ 美代子
空は夕色来るや来ぬやら ゆきこ
三上山峰の上なる流れ雲 玖那
黄泉平坂(よもつひらさか)知らざりしとぞ 晴男
願はくは終(つひ)の旅をもやすらけく みのり
琵琶の語りに荒武者も泣き 泥舟
城落ちてくまなく照らす望の月 美代子
庭も籬も秋の野らなる 欣子
遣水の址かや残る虫のこゑ
中也が好きとそを口ずさみ 泥舟
なよびかに枝垂れの花の「ゆやゆよん」 晴男
青限りなきふらここの空 善帆
(二の折 表)
待ちかねし安達太良山の雪とけて 玖那
若駒競ひ駆くる水際
たそかれに重き荷おろす道半ば 純女
下紐を解く一夜の宿り 晴男
侘びしさに木槿挿して関越えん 泥舟
いつまで草のさゆらぐあたり 欣子
なにがしの院と伝はる野分後
絵巻ゆかしき有明の月 善帆
読むに倦み書くに飽きたる目の遊び 美代子
打出の浜へうちつれてこそ 玖那
さざなみのささやきさへも恋語り みのり
君偲ぶがに鳴く都鳥 晴男
寒紅の言問ひたげな唇を
生(あ)れましときのあの伎芸天 泥舟
(二の折 裏)
その上の仏を今に訪ねきて 欣子
大和をのこの技を称ふる 美代子
誰かまた畝傍を愛(う)しと相競ひ みのり
おのがじしなる竹の皮脱ぐ 晴男
おちこちに水練の子ら身体干す 玖那
沖をみずとも希望はありき 泥舟
はからずも入集のしらせ届く朝
人は名のみに残る薄月 みのり
露の世のさかへおとろへ常ながら 欣子
奥深き山さやかに越えむ 晴男
見納めの小屋の扉に釘を打ち 泥舟
ジンタのひびき耳に残りて 玖那
はらはらとシルクハットにふぶく花 欣子
堤の柳青みわたれる 善帆
(三の折 表)
枝かすめ水面一閃燕とぶ
泣けと如くに夕日輝く 泥舟
いさよひて旅の窓辺につづる文 純女
妹背結びを神に祈ぎつつ 晴男
傘閉じて二荒山の夏木立 玖那
片陰の道蝉しぐれふる
腹すかし家へ帰る子手をつなぎ 泥舟
川のほとりの地蔵ほほ笑む 善帆
此はもしや生禅ならむたぢろげば 晴男
稲光してすずめ散り散り 正謹
はやも穂を垂るる田の上鳴子縄
色なき風も音に見えしか 伏木
むら雲のきれて月見るわたのはら 玖那
閉まる大木戸犬の遠吠え 泥舟
(三の折 裏)
ためしなき憂き河竹の憂き語り 欣子
縁の糸も断ちし身の上 みのり
凍土を踏みしめ独り辿りゆく
臆するなかれ途(みち)の障りに みのり
三略も深山かくれに大天狗 玖那
飛鳥の如き遮那王の剣
こしらへを祝ぐや幟もはためきて 正謹
旅の心に詠むかきつばた 欣子
古袷着つつなれにし心地よさ 玖那
大和の宇陀に埴やはらかく みのり
おぼろ月あえかに匂ふ県跡 ゆきこ
国境の山霞たなびく
花になほいづくの鐘の聞こゆらん 善帆
水面きらめく橋をわたれば 正純
(名残折 表)
ひとをこそ思ひそめてや通ふなる みのり
かへすがへすもたのむ又の日 欣子
徒し世の命の隙に言かはし ゆきこ
ことども忘れぬ雪投げの子ら 玖那
スケート場をのこも真似るイナバウア
お岩木山を逆しまに見る みのり
台風の進路気になる林檎園 泥舟
ましてや雁の旅を思へば ゆきこ
雲きれて後の月見る仮寝宿
稲刈る人もまどろみにけり 玖那
手に粟と黄金の夢ぞ実りなく 伏木
割れて砕けて裂けて散るのみ 英夫
嘆きせば滾つこころの滝つ川 みのり
すゑには逢はむ恋の螢火
(名残折 裏)
団扇する手を躊躇はす風の音 正謹
今日もきょうとて上方の文 泥舟
おうやうに雲遊ばせる空ひろく ゆきこ
上の御殿へわたるきざはし
とのゐ物提げて今宵の宮仕 正謹
あけそめて呼ぶうぐいすの声 玖那
ためしにもよらば示しの花ここぞ 伏木
風うららかにかはす盃 善帆