平成18年12月31日の連歌作品

(初折 表)
夏虫を祓へば清し神の庭 伏木

茂りを支ふ枝のこもごも 正謹
里遠く都の方に住みかへて 欣子
雅言葉を習ふあけくれ
月の船星の林を漕ぎわたる みのり
爽やかに風曇をぬぐへり 純女
千枚田にたみのはぐさはたわわなる 隆志
茜射す方雁渡る見ゆ 泥舟
(初折 裏)
捨て曲輪昔偲べばさなきだに
かくれんぼする童らの声 浜菅
姫君も真似びたまひて帳のかげ みのり
間合のわろき出を笑われて 泥舟
下京へ猿も濡れ行く時雨空
堀川端に酸茎(すぐき)売りつつ ゆきこ
律義者世過ぎ是非無き長仕へ 正謹
頭(かうべ)に宿る神もあるべし みのり
をりふしに鰯牛頭馬頭獅子頭 英夫
はやり病も過ぎおぼろ月 泥舟
夕暮れは物ぞ思ふる弥生山 善帆
柳襲の袖もなつかし 欣子
花陰のなうなうそれなる風流人
われをも舟にほんにお待ちを 自然坊
(二の折 表)
目覚めれば破れ畳に欠け茶碗 泥舟
夢かんたんに栄華をきはむ 伏木
やすらひへ誘ふ枕を商へば 正謹
信濃は遠き雲のかよひ路 みのり
この想ひ千里を越える術もがな 正純
紅葉も胸も色に燃ゆるを ゆきこ
人言の繁きを痛み露寒の
うつつをよそに吹く雁わたし 欣子
黒木つむ家にめづらし琵琶の音 泥舟
添ふる薫りは六種のいづれ 善帆
このたびは菖蒲香をと沙汰ありて
ふりみふらずみ今日の五月雨 浜菅
下々を知らぬ有明涼し顔 正純
さまかわりたる別れかさねて 泥舟
(二の折 裏)
墨衣なれてなつかし筆のあと 欣子
紺紙銀字経几辺に展げ
有難きよりもその価値気にかかり 隆志
いま靖国と大御心と みのり
寄する波北風に浦安からず 正謹
雪にせつなき海鳥の声 善帆
跡継もなくて漁師が鍬を振る 泥舟
都会(まち)へ去(い)にし娘(こ)まだ好いちょーと 正純
草千里青みゆく月身に入みて 正謹
さまでな吹きそ野分といふも 欣子
霧深し何を誘ひの囮笛 みのり
空耳なるか無常迅速 泥舟
つらつらと生き死にのこと花の下 ゆきこ
されば浮世は蝶と連れ舞
(三の折 表)
楫枕ときに是非なき比良の荒れ 正謹
何に名残の夕暮れの雪 みのり
ひとこいてつげるすべさえしらざりき 泥舟
君への思ひ今も変はらず 善帆
こぞり待ついまひとたびの行幸いつ 伏木
かぎりの紅葉霜に耐えたる 正謹
奥山に木樵る音広く冴えわたり 隆志
凍りて残る杣川の月 みのり
隈ごとに振り返る児の手を引いて 泥舟
アイスクリンの旗さし招きけり 玖那
汗にかく御輿はればれ鳥居筋 欣子
古き例と揃ふ足並 正謹
筑波へは同じ流れを掬(むす)びつつ みのり
連ね歌詠み日々を豊かに 純女
(三の折 裏)
万象をあはれぶ心育まむ 正謹
神の御旨(みむね)に因(よ)らぬもの無く ゆきこ
稲妻のかよひてけふの田のみのり 欣子
不出来の案山子物言わざれば 玖那
行き暮れてかりがね高く街遠し 正謹
一夜の酒をたれと温めむ 善帆
菊かをる祝賀の舞は蘭陵王
代代弥栄の弓は鳴るなる みのり
わたりくる風静かなれ大内山 欣子
悠な月の影の涼しさ 正謹
きらきらと川面につづく魚の跳ね 善帆
ふなべり洗ふ波ものどけく
花万朶くぐれば至る港町 正謹
外人墓地も陽炎の中 みのり
(名残折 表)
夕ぐれは老の楽師の手風琴 ゆきこ
ピエロの嘆き歌姫知るや
みをつくし浪花名に負ふくいだおれ 正謹
行き交う人もけふのにぎわい 玖那
燕さり雁くる空や北南(きたみなみ) みのり
秋気澄みゆく東塔西塔
露にむせぶ法の教へのありがたき ゆきこ
巻数は山に眠る幾年 正謹
冬籠見ぬ世のひとを友として
杉戸を訪ふは木枯らしばかり 欣子
髷解きて翳す刃に凍る月 正謹
天佑未だわれに与(くみ)せず みのり
薫陶を今に受け継ぐ藩学校
質実剛健貞淑穏和 信也
(名残折 裏)
四つの季移ろひてこそ知るあはれ 正謹
西の京なるみあと慕ひて
山あらばふと口ずさむ歌のある 善帆
牧場のあした風清しくて 正謹
羽連ね巣立ちうれしき文目鳥 伏木
あたりを統べてけさの囀り 欣子
ふるさとは花の真秀となりにけり みのり
おほらかに人和む春雨 正謹