平成21年3月9日の連歌作品

賦 御何連歌

(初折 表)
年たつや民幸くあれ穏しかれ どん

冬てふべくもうらら小春日 みのり
陽にかざす常盤木ながら水冴へて にちまろ
扇の色もいとあでやかに 玖那
節も良きそは寿ぎの歌ならむ 瑞恵
宴の庭にすだく虫の音 善帆
澄む月を牛飼童もふり仰ぎ
空の赤がね雁わたる路 にちまろ
(初折 裏)
荒磯波(ありそなみ)千舟よりあふ船泊 康代
旗に市なすぞめきこもごも 正謹
大関は名告(なのり)また良き日馬富士 ゆきこ
たまはる盃に満つる慶び にちまろ
初めての恋よみがへる心地して どん
かなはぬ思ひいと五月雨るる 康代
宿直(とのゐ)の夜聞きしらうたき姫君を
虫を愛でるといかで知るらむ。 玖那
秋の野は芒刈萱なびきつつ 瑞恵
門吹く風に揺るる干柿 にちまろ
手向山神の諭しの身にしみて どん
むかし心地にかすむ峰々 康代
朧夜や後生を花に頼みけり ゆきこ
雛の紅き裳波のまにまに
(二の折 表)
干潟には吃驚眼(びっくりまなこ)のムツゴロウ みのり
「チェンジ」に賭ける衆の雄叫び 瑞恵
朝の風雪雲はらふ都入り どん
なほ深霜の行く手見つめて
福は内豆は迸(とばし)る鬼は外 ゆきこ
なにもて打たむにくき徒人 音阿
このたびは初音の鼓たずさへて 玖那
梨子地にひそと揺るる秋草 善帆
月影のうつるもはやし寺の窓 どん
宝の池の水も澄むらむ みのり
童子らは迦陵頻伽となりて舞ふ
駒にもひとつ角生ふるとや 康代
牧の原風の渡りのここちよし
山の端を行く雲ゆるらかに 暁子
(二の折 裏)
夕立の過ぎにし空に虹立ちて
浴衣すがたもおちこちに見ゆ 玖那
曲がり道宿はいづくぞ湯の香り どん
うれしや情こもる言の葉 欣子
あふほどにさてもそなたは好(よ)き殿御 音阿
いでなぐさみにひとさし舞はむ 玖那
降る雪や遠流の島の宮の跡
無月に暗き梟の声 瑞恵
明けぬれば所の夷訪ね来て 音阿
鳥渡おほめに投げる賽銭 佐為
世の中は酸いも甘いも裏表 玖那
うららに老の楽しくあらな 佐為
立ち添ひて眺むる花の仄かなり 康代
霞がくれの恋の行く末 どん
(三の折 表)
背き出づるわがふる里は遠のいて 佐為
けふも変わらず都にあれば 玖那
先駆ける舎人の声の風にのり
ここに始まる車争ひ どん
祭笛ひときは高く響きをり 順子
床のあかりをゆらす鴨川 佐為
賽の目も思わしからぬ心地して 玖那
山法師らの為業ゆゆしき
堪忍をひとには道と説きながら 佐為
はやうそ寒の空だにさびし 音阿
いずくにぞ鹿の隠れて忍び居る 玖那
もみぢかつ散る峡のゆふぐれ 佐為
あまつかぜ月の雫を払ふほど どん
甘くも甘き君がささやき みのり
(三の折 裏)
舞ふ雪に乱る思いをうつしけり 順子
木枯らしも見よすぐなる心 玖那
ひたぶるに生くるはよそ目狂ふごと 佐為
誰が東海の一握の砂 ゆきこ
片方(かたへ)にはかなしからずや白鳥の 瑞恵
出会はばいざや連ね歌せむ みのり
柿本(かきのもと)の衆にあらずや笠の人
鈴の音ゆかし法の山かげ 玖那
行く雲にいざなはれつつ膝栗毛 どん
そらをさだめて立たん有明 佐為
後朝(きぬぎぬ)をふと吹き抜ける秋の風 ゆきこ
雁(かりがね)のこゑ閨にほの聞く
花のころたどる夢路のおぼろにて 佐為
寛(ゆた)にたゆたにうららかな海 みのり
(名残折 表)
遠がすみいささかけ舟島がくれ どん
近くばよって雛をめでなむ 玖那
子をなしてだんだんわかる親ごころ 佐為
昔語りになるもあはれや
吉野山険しき峰にかかる雲 順子
ぶっぽうそう鳴く逆入りの道 みのり
ねじり草たけに草さへ懐かしく 康代
朋と語りしひとときありて 玖那
倖せはひとそれぞれに違ふらし 佐為
新豊御酒(にひとよみき)を供ふ大前 音阿
清らかに心澄ませて歌を詠み どん
隈なき空に月を眺めむ 玖那
ひたひたと寄せてうねるや望の潮 佐為
昔を今にかへす櫓の音 瑞恵
(名残折 裏)
人しげくあきなふ傍の難波橋 玖那
みをつくさねばくいのこるべき 佐為
はればれと夏立つ今朝の風薫る ゆきこ
ほととぎすの声まづぞ待たるる
山がつの庵のけぶりもほそるらん 佐為
庭の雪とけ表に出でむ 玖那
世の様はともあれ届く花便り みのり
すがらひすがら舞へや佐保姫 欣子