平成21年9月9日の連歌作品

賦 何衣連歌

(初折 表)
今年またこの花の下(もと)小編笠

こころに染むや杜のうぐひす 佐為
四方の山春の匂ひにつつまれて どん
ふもと長閑けくうち霞みたり 瑞恵
小流れに笹舟浮かべ競ふらむ 音阿
その行く末は市の賑はひ たかし
望月のたたはしき夜や駒をひく みのり
鈴虫はべる足元の道 玖那
(初折 裏)
露時雨しばしと野辺にふり出でて ゆきこ
ひと木の下を頼むせつなさ 順子
いつしかに重ね重ねし袖の香に 欣子
涼しき風の通る路地裏 康代
子らの声追ひつ追はれつ虹の空 善帆
そは想ひ出の九十九里浜 どん
かはらぬはよせてはかへす細波(さざれなみ)
柱時計の振り子にも似て 玖那
まつむしや夕轟きの胸の内 みのり
閨の廂をもるる月かげ
睦言をつつむ狭霧のうす衣 瑞恵
ほどよき酔ひに身をまかせばや どん
さくら咲く春ようららにさくら咲く みのり
(システムの不具合により、初折裏14から三折表7までが欠落しています)
蚊遣りをたけばけぶる月影 康代
浮雲のさまよふ山辺風見えて みのり
真帆かけ出づる魚捕(いをとり)の舟 たかし
小冠者も腰蓑まとひ身をやつし
何を誓ひの宮詣り道 どん
ひびき合ふ音だに寒き明けの鐘 瑞恵
凍てて鶴群(たづむら)めざむるもなし みのり
(三の折 裏)
遥かなる釧路の街の細雪 玖那
積もる思ひは船場いとさん 康代
世心をわかぬ老舗の紺暖簾 どん
恋と商ひいづれが重い
旅ゆけば追分道の道しるべ 玖那
蜻蛉とまりてとびたつ方へ 音阿
唄伝ふ人さはやかに千の風 どん
もののあはれも澄みわたる月 みのり
たちこめし宇治の川霧たえだえに
あらはれそむる争ひの跡 瑞恵
契りおく絆は脆き除目前 どん
陣座(じんのざ)退(まか)る春まだ寒き
さらばとて頭挿(かざ)さむ花もなかりけり みのり
待つ報(しらせ)こそ「さくらさく」なれ 瑞恵
(名残折 表)
山家には似気なきなりの晴れ衣 どん
声朗々と歌会(うたゑ)するらし ゆきこ
恋の句を汝も名告るやほととぎす
やうやくに逢ふ夜の短かきに みのり
枕もとかはく間ぞなきうらめしく 玖那
さりとてさまで憎からぬ君 瑞恵
この辺の者でござると里狸
徳利持つ手に木の葉舞ひ散る どん
お手盛りもばらまきも言ふ選挙前 みのり
嘘か真か心して見よ 玖那
秋立ちぬいよよその日の迫りくる
わが芋畑よき月夜なり みのり
鼻唄に虫楽しげな音をそへて どん
しばし憩はむ湯煙の里 善帆
(名残折 裏)
峠行く連歌師らしきうしろかげ
筆さらさらと書き残したる 玖那
かの文はいかなる筋の手になるか 善帆
つつめどもるる匂ひ気高き どん
組香のしつらへゆかし銀屏風
夕影せまるいと長閑やかに みのり
花に酔ひ車返して見る帝 たかし
大和まほろば鐘霞む里 善帆