平成23年7月19日の連歌作品

賦 何水連歌

(初折 表)
秋はまだ色待つ銀杏並木かな みのり

遠き生駒嶺奔る稲妻 欣子
夜々重ね月いよよ澄む影寂びて
耳をすませば虫の唄声 玖那
旅の道しるべ見目良く並ぶらむ たかし
煙たなびく陶の里とて どん
埴土の匂ふ明け暮れ風涼し 瑞恵
菖蒲の苑にわたる石橋 ゆきこ
(初折 裏)
遣水に映る狩衣立烏帽子
ひと句の後の御酒やかぐはし 善帆
歩み来てここや名に負ふ灘五郷 玖那
恵比須の神の在(おは)します森 みのり
芸事の上達祈る二人連れ たかし
相合傘につもる初雪 ゆきこ
ふりむけば雲間に月のさえざえと 欣子
まなこゐ浄く阿修羅は在(いま)す
いにしへを伝ふる塔のゆかしくて 善帆
想ひ出ふかき旅のをりふし たかし
ふるさとやダムを作るも作らずも みのり
たまる思いを拳にこめて 玖那
我と散る同期の花を送りたり どん
帰らぬ春を青春と言ふ 瑞恵
(二の折 表)
行く雁を仰ぐ追ふすべ知らぬまま 正謹
身をなさばやはおぼろ夕闇
藤ごろも遠きみやこの賑はひに 正謹
史(ふみ)縫ひかへせ纏向の山 みのり
主や誰麓風立つ住まい跡 欣子
あいなだのみを心に秘めて たかし
たまゆらのうき世の夢か宝籤 正謹
いまだ消えざり虹の掛橋
おとめごの夏服写る川の面 玖那
いづれあやめかかきつばたなる 瑞恵
その昔宿に植ゑにし恋形見 どん
長谷のみ寺の御灯明(みあかし)の蔭
満願の夜の百段(ももきだ)月さして みのり
侍る直会(なほらひ)鳴きまさる虫 正謹
(二の折 裏)
新しき酒(ささ)に翁も酔ひ給ひ
霧にまぎらふ秋ぞさびしき 瑞恵
さらさらと風のみ通ふ杣道の ゆきこ
細きを踏みて君は来るてふ みのり
この夜は子ら耳澄ませゐ寝もせず 正謹
鐘の百八つ数へても見ん ゆきこ
寒行に祈るすがたもあなたふと 玖那
うすき僧衣に小雪散り舞ふ
徒し世も捨てにし恋もなつかしく 瑞恵
想ひの数を寂びし文箱に 正謹
水茎のあともつらつら連ね歌 欣子
たどるもゆかし筑波嶺の道
花うたげ男山女山におぼろ月 正謹
都ぞ弥生尽きぬ名残を みのり
(三の折 表)
池の面に綾織る春の小雨降り
羽音やさしき引鴨の群れ たかし
長の手を旅ゆくことも定めなる 瑞恵
けふも穏(おだ)ひに同行二人 玖那
大関や勝つも負くるも名を遂げて みのり
千夜(ちよ)逢ひたいか寝(い)をねず呻(うめ)く
幻や榻(しぢ)の端書(はしがき)あと絶ゆる 音阿
翳(さしは)の影に愁ひ漂ふ 正謹
地震(なゐ)のこと癒えざる嘆き声も凍て
命の水は冬の海へと どん
月は我が頭(かしら)の霜に照り映えつ みのり
ふけゆくままに砧打つ音
これやこの世にも稀なるましら酒 瑞恵
木の実踏みしめ丹波路の旅 どん
(三の折 裏)
ご当所はでかんしょでかんしょと明け暮れて ゆきこ
今こそ踊れ我らはらから 玖那
隣国と多年の公事(くじ)も和議となり
関も毀(こぼ)たれ通う涼風 音阿
青芝に座して仰げや雲の道 どん
ともに語りし我がこころざし 玖那
競ひ舞ひ高く跳ばなむ四回転
雪を氷を統ぶる雄々しさ 瑞恵
ものすべて銀色に月冴ゆる 音阿
薬師如来の慈悲ぞあまねき どん
なに思ふなにとて嘆くなかなかに
琵琶の調べものどかにすぎて 玖那
久々に訪へばやいまし花の宴 みのり
霞たなびき隠す小車 音阿
(名残折 表)
甘き香の主は何処ぞをぐら山 どん
一日(ひとひ)撰歌に暮るる籬辺
春や秋恋述懐も仕分けして みのり
雨多けれど水無月となり 正純
梔子の白さ目に染む司召 正謹
災ひ軽き世を祈りつつ どん
此度(こたび)こそ確かな幸(さち)を鉋音(かんなおと)
打てば響きて以心伝心 玖那
つらね歌楽しむ仲間寄り合へば 正謹
長き船路も飽くることなし どん
まどろめば波切りの調べ心地よく 正謹
月誘(いざな)ふや夢の園生へ
白菊の神々しくも輝きて 正純
注連厳(おごそ)かに霧息吹く岩 宜博
(名残折 裏)
ここらにて一息つけば縄手道 玖那
茶屋のながめを染むる夕影 正謹
山裾は深きしじまにつつまれて どん
音もかそけく時雨降り過ぐ
広き河色もかえずにとうとうと 正純
ひねもす春の海をめざしぬ どん
うかれ出づるこころは花もとめられず 佐為
霧にうぐひす冴えわたるこゑ 涅阿